熊本大学 法学部2017
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民法(山根 聡恵)ゼミKumamoto University Faculty of Law専門ゼミ先生:先生:学生1:学生1:学生2:学生2:「法律学では、問題に対する答えは一つとは限らないため、さまざまな立場を検討した上で、自分がどの立場に賛成するのか、逆になぜ他の立場に反対なのかを論理的に考えて結論を導きます。こうした法的な思考方法を訓練するためには、教科書を読んでまとめるだけでなく、他の人との議論を通じて、自分が賛成する考え方に問題点があるということに気づいたり、問題点をどう克服するか、自分とは異なる考え方の方が論理的ではないかなどと考えることが必要となります。これこそがゼミの役割です。では、今日の問題はどう考えたらいいでしょうか?」「Aは100g300円のバターをBに300g渡したのだから、Aは代金として900円をBに請求できるんじゃないかな。」「そうかな?AはBに200g渡せばよかったのに、うっかり300gのバターを渡してしまったのはAの責任だから、Aは最初に約束したとおり600円しか請求できないと思うな。」「でも、Bはバターを300g受け取っているのに、代金を600円しか払わなくてよいということになると、Aはバター100g分の代金を損することになるよね。売買契約は、売主が買主に渡す物と買主が払う代金とが同じ価値だと考えるからこそ成り立つ契約だから、Aが損するのはおかしいと思うんだけど…。それに、民法の条文では、仮にAがBに渡したバターの分量が約束より少なかった場合についてはBが代金の減額を請求できると定めてあるんだから、バターの分量が多かったら代金の増額を請求できるのは当然じゃないかなあ。」「う~ん、確かにAは損するね。だけど、Bに間違ってバターを300g渡したのはA自身だから仕方がないんじゃないかな。AはBとの契約で代金を600円にすると決めたんだし、Aがバターの分量を間違ったのに、約束したより300円も余計にBが払わなければいけないという結論は、Aが損するという結論よりもっとおかしい気がする。それに、渡したバターの分量が少なかった場合についての条文はあるけど、多かった場合については条文がないということは、増額請求を認めないと考えられたからじゃないかなあ。」「どちらの考え方にもそれなりに理由があるね。基本的には、いま二人が挙げた根拠を中心にして、請求金額を考えることになります。つまり、AがBに渡した物とAがBに請求できる金額は同じ価値でなければならないのか、それともたとえBが結果的に得をすることになっても、AとBとの契約を守ることが重要と考えるかによります。どう考えれば妥当な解釈となるかについて、じっくり考えていきましょう。」1・2年次には、基礎演習として少人数クラスの授業があります。3年次には、いよいよ専門科目に分れたゼミ(ゼミナール)が始ります。希望する科目ごとに学生が集り、担当者による報告を基に議論をするのが一般的です。 学生達の勉強会に教員も参加し、必要な場合に助言するというイメージです。 この専門ゼミが大学での勉強のメインといってもいいでしょう。13AがBに100g300円のバター200gを売る契約をした。実際にAがBに渡したバターの分量は300gであった。このときAはBにバターの代金をいくら請求できるか?Satoe YAMANEそして、ゼミは続く……。

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