学生リレーエッセイ

2021.11.08  <学生F(2021年11月8日)>

 コロナ禍になり1年半が経ったが、大学生活もその影響を受け、講義は原則遠隔という形式が2021年前期も続いている。メディアではこのような大学生活について批判的な報道が多くなされている。遠隔授業中心で、学生同士のつながりが少なくなり充実した学生生活が送れていない、という批判である。私自身は、コロナ禍の遠隔授業では得られないものはこの他にもあると思う。
 それは、講義内容への関心である。私は法学部に入学した当初、法学には興味があったがどんな法律があるのかは知らず、また特定の法律分野に興味はなかった。しかし、入学してから憲法や民法、刑法など様々な講義を受ける中で、それぞれの法律の構成や考え方を学び、面白さを感じた。また、講義の中では判例を扱うことが多く、その判例の概要や位置づけを学ぶのが重要になってくるのだが、補足としてその事件の背景や類似した事件ではどのような判決が出たのか、といった情報まで知ると興味が出てくる。対面の講義だとこのような補足まで含めて先生が雑談として話してくださるので、私はそれもレジュメにメモして興味を深めることができた。対面講義だと講義後に質問もしやすいので、分からなかったことや興味が出てきたことについて先生に直接聞いてみることも多かった。法学部では3年生からゼミに入り、ある法律分野を専門的に学ぶのだが、対面講義での興味を深めた学びがそのゼミ選びで非常に役立った。
 このような興味関心を深めることは遠隔講義では難しくなったと思う。学生としてはパソコンを見つめるばかりで、どうしても受け身になってしまい主体的に学ぶ姿勢が抜けているように感じる。学生と先生の間で反応が分からず、内容を理解できているか確認できない状況で、先生も雑談をすることが少なくなっていると思う。また遠隔講義だと質問も難しく、直接コミュニケーションをとることもできなくなっているので、せっかく内容に興味を持っても、深く学ぶことができにくくなっている。講義のゴールは単位をとることだと割り切ってしまえば、遠隔講義中で触れられた内容を最低限学んで定期試験で良い成績を残せばいい、ということになるが、私は講義のゴールをそこに設定するのはもったいないと思う。単位をとるためではなく、その先の専門的に学びたい分野を見つけるために講義を受ければ、後々のゼミ選びに役に立つ。せっかく講義を受けるなら、講義後の定期試験のみで学んだ内容を活かすのではなく、その先の学生生活にも役立たせなければもったいないと思う。その意味では、遠隔講義で最低限の学びをしていては興味を持ち深めることが難しいと感じる。主体的に学び、専門分野への興味を持ち深めることは、遠隔講義で得られない大切なものだと思う。
 先日、知り合いの1年生と会った時に話したことがある。その1年生は自動車学校に通っているらしいのだが、「大学の講義よりも自動車学校の授業の方が直接受けているので内容が入ってくる」「大学の講義は遠隔ばかりで学んでいる感じがしない」と話していた。やはり、対面で受講することでのメリットは大きそうだ。特に対面講義をほとんど受けていない1年生や2年生は遠隔講義に慣れてしまっているので、主体的に学び興味関心を持つ姿勢を自分で意識して持ってほしいし、それを持つことが後々の学びに必ず貢献してくれるはずである。