学生・教員リレーエッセイ

2012.05.10  <教員 S>

 どうしてぼくはココにいて、こんなことをしているのだろう?
 モルモットを膝にのせて、ナデナデ・ヨシヨシしながら、ふとそう思った。数年前、4年生ゼミで「卒業お別れ遠足」と称してなぜか熊本動物園へ行ったときのこと。動物好きのMさんたちの後を追って、「ふれあい広場」の一室を開けたとたん、「抱っこしますか?」の声。「ハァ?ハ、はい」と意味もわからず答えたら・・・。そこまでぼんやりたどり返してみたものの、無条件にかわゆいモルモットのぬくもりがその先の野暮な詮索をとろけさせてしまった。
 不忍池のベンチに信玄袋を大事に抱えた好々爺を想像して苦笑していると、飼育係の女性の解説が耳に届く。ぼくの膝のうえのこのモルモットという生き物、もともと気が小さく、人にかわいがられるにも経験と修練が必要なのだそうだ。「この子たちはベテランなんです」と、ちょっと誇らしげなことば。―そうか、迂闊だった。気がつきませんでした。さっきからナデナデ・ヨシヨシされているのは、モルモットではなくてぼくの方なのですね。
 春、卒業式に入学式がつづく。4年間の時の流れを思いながら、学生たちの成長をつくづく実感する季節でもある。よちよち歩きにしか見えなかった新入生たちが、いつの間にか世間知らずの教員を支え気遣ってくれる存在になっていく。世話をしているつもりが、世話をされていることに気づく瞬間、これもまた教員としてのうれしい驚き。
 もちろん、そこは人間の大学生、無条件にかわゆいというような代物ではないのだが、それゆえにか、なぜかときどき輝いて見えるから不思議だ。