シンポジウム・セミナー

シンポジウム「被害者分断の克服に向けて」

パネリスト:
川本愛一郎(チッソ水俣病被害当事者)
堅山勲(ハンセン病被害当事者)
国宗直子(熊本県弁護士会弁護士)
三谷仁美(熊本大学法学部)
概要掲載誌:
熊本法学第150号65~126頁(2020年11月)

 

 このシンポジウムは、2020(令和2年)6月6日に、熊本大学大学院人文社会科学研究部(法学系)・同社会文化科学教育部(法学系)・法学部により、国・企業の不法行為による損害を受けた被害者が救済を求めるにあたり分断されているという認識のもと、その現状及び克服の方向性を検討するために開催されました。

 パネリストは、川本愛一郎氏(チッソ水俣病被害当事者)、堅山勲氏(ハンセン病被害当事者)、国宗直子氏(熊本県弁護士会弁護士)、三谷仁美講師(熊本大学法学部)の4氏です。

 川本氏には、原因企業のいわゆる城下町で当該企業に対して責任追及をしていくことの困難さをお話しいただきました。共に一定の被害を被っているであろう当事者たちであっても、いざ国・大企業に立ち向かうとなると、さまざまな関係から一つになるのは難しい様子がご報告からうかがえます。

 堅山氏は「らい予防法」違憲国賠訴訟を提訴・遂行するうえで、療養所の入所者に対して原告にくわわると損をするかのような話が流布されていたご経験をお話しされています。堅山氏のお話を引き継いで、国賠訴訟弁護団の国宗氏は、国・行政の責任の明確化を求める訴訟を「政策形成訴訟」とされ、こうした訴訟においては何よりも被害者・原告団の団結が重要であることをお話しされています。

 三谷講師は、2011年の東日本大震災による福島第一原発事故に起因する損害賠償をモチーフに、国が被害者に賠償するにあたり何らかの線引きをすること自体は否定できないが、国がその基準を当事者たちに盲目的に受け入れさせようとしてしまっていることに被害者分断の原因があるのではないか、といいます。こうした分断を防ぐには「共感力」を養うことが肝要であり、その視点から丁寧な聞き取り調査の結果を報告しています。

(大日方信春)

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