熊本大学での授業

 熊本大学法学部、大学院社会文化科学教育部法政・紛争解決学専攻、同紛争解決学国際連携専攻では、熊本に関する事件・社会問題を社会科学の複数の学問領域からアプローチする「実践社会科学」の手法を用いた授業を展開しています(実践社会科学は熊本大学法学部の造語です)。これが全国のどこにもない熊本大学法学部・法学系大学院にオリジナルな教育課程となります。

 本センターもこの実践社会科学の手法を用いて、熊本で生起した、しかし、全国のどこでも問題になり得る事件・社会問題をテーマとしたシンポジウムを開催しております。

開催年度シンポジウムの
テーマ
シンポジウムの
内容
2020年度 被害者分断の克服に向けて https://www.law.kumamoto-u.ac.jp/lperc/news/2020/06/post-1.html
2021年度 冤罪被害者と犯罪被害者を結ぶ https://www.law.kumamoto-u.ac.jp/lperc/news/2021/06/post-2.html
2022年度 日本における外国人の労働 ~ 技能実習制度に見る「分断」~ https://www.law.kumamoto-u.ac.jp/lperc/news/2022/06/post-6.html

 熊本大学法学部・法学系大学院では、こうしたシンポジウムや実践社会科学研究会の成果を授業として学生に提供しています。このページでは「交渉紛争解決と法」(2023年度前期開講)の内容をご紹介します。

交渉紛争解決と法(Negotiations Dispute Resolution and Law)

授業の
概要
本講義は、熊本の社会的課題(紛争)について、その解決を図るための具体的な取り組みを概説するものである。
具体的には、① ハンセン病差別、② 冤罪被害者と犯罪被害者の分断、③ 外国人技能実習生の問題といった問題を取り上げている。
各回の授業テーマと内容の概略
授業回授業テーマ内容の概略
【講義の概説(実践社会科学について)】
1 熊本の社会問題と実践社会科学 本講義の全体テーマである熊本で生起している社会問題の概要と実践社会科学の手法について概説する。
【ハンセン病差別問題について】
2 ハンセン病家族訴訟の意義と課題 ハンセン病差別がその患者家族にまで及んだ責任を国に問うたハンセン病家族訴訟を中心に検討する。
3 ハンセン病差別と菊池事件 熊本県での「無らい県運動」が進められていた中で生じた菊池事件の問題について概説する。
4 今も続くハンセン病差別被害 2001年の「らい予防法」違憲国賠訴訟判決後も続くハンセン病差別とその克服に向けた取り組みの在り方について概説する。
5 ハンセン病差別問題とその克服に向けて 3回に渡るハンセン病差別問題に関する講義の総括に基づき、その克服の方法について検討する。
【冤罪被害、犯罪状況について】
6 免田事件の冤罪被害と死刑問題 熊本県内で発生した死刑再審事件である免田事件の冤罪被害と死刑問題について概説する。
7 松橋事件の冤罪被害 免田事件の再審無罪後に熊本県内で発生した殺人事件である松橋事件における冤罪被害について概説する。
8 熊本県の犯罪被害者の現状 犯罪被害者の支援者の立場から、犯罪被害者の現状について検討する。
9 冤罪被害者と犯罪被害者の被害克服に向けて 冤罪被害者と犯罪被害者のそれぞれの被害を踏まえて、その被害克服に向けて必要とされる取組みについて概説する。
【外国人技能実習制度について】
10 外国人技能実習生問題の現実と構造 外国人技能実習生問題の現実とそれが生じる構造について概説する。
11 外国人技能実習生問題と裁判 ベトナム人技能実習生が死体遺棄罪で逮捕・起訴された事件を中心に、その裁判の問題点などについて検討する。
12 熊本における外国人技能実習生の現実 熊本で外国人技能実習生を支援してきたことから見える、外国人技能実習生の現実とその支援の在り方について概説する。
13 外国人技能実習生問題の克服に向けて 外国人技能実習生問題の克服に向けて求められる取組みについて検討する。
【講義のまとめ】
14 熊本で生起している社会問題克服への取組みに向けて ハンセン病差別、冤罪被害と犯罪被害の相克について、外国人技能実習生差別などの諸問題の克服に向けた取り組みの在り方について検討する。
15 総括(まとめ) 本講義の総括をする。

*法学部「交渉紛争解決と法」(2単位、選択必修科目)のシラバス

*大学院「紛争解決学」(2単位、必修)のシラバス