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シンポジウム「日本における外国人の労働 ~ 技能実習制度に見る『分断』~」

パネリスト:小野寺信勝(札幌弁護士会)

      斉藤善久(神戸大学大学院国際協力研究科)

      石黒大貴(熊本県弁護士会)

      海北由希子(NPO法人熊本YWCA運営委員)

      中内 哲(熊本大学大学院人文社会科学研究部)

 2022年6月4日、シンポジウム「日本における外国人の労働~技能実習制度に見る『分断』~」が、技能実習生の事件や支援に関わられている、弁護士、大学教員、NPO法人職員といった多彩な登壇者を迎え、熊本大学文法棟A1講義室とzoomのハイブリッドで開催されました。

 シンポジウムでは、当研究部の中内哲教授による、技能実習生をめぐる制度と現状についての基本事項のレクチャーの後、4名の登壇者により3つの講演が行われました。

 最初に、小野寺信勝弁護士が、大変な被害に遭っているにもかかわらず、小野寺弁護士ご自身を含む支援者から差し伸べられた支援を断る実習生の例を紹介され、彼らの抱える事情を細やかに解きほぐしながら、権利主張を拒否させるハードルとして、制度設計、経済上の理由、および強制帰国があることを明らかにされました。

 続いて、神戸大学大学院国際協力研究科の斉藤善久准教授が、「技能実習生はなぜ救済にアクセスしない(できない)のか」との問いを掲げられ、言語の壁、知識の欠如、転職副職の禁止、借金の他、同僚や母国政府の協力など、種々の要素を、具体的なエピソードに基づいて明らかにされました。また、これらを裏付ける3つの事例をご紹介くださいました。

 最後に、石黒大貴弁護士と、NPO法人熊本YWCA運営委員であり、コムスタカ~外国人と共に生きる会~事務局の海北由希子氏が、共同で、孤立出産のふたつの事案をご紹介くださいました。ひとつは、孤立出産で死産の上、死体遺棄罪の刑事被告人になってしまったベトナム人実習生リンさんの事案、他方は、数多くのハードルの先に、何とか支援者に辿り着き、無事出産を迎えたフィリピン人実習生ISSAさんの事案です。結果に差はあれども、いずれの事案も、技能実習制度が絶望的な欠陥を抱えていることを裏付けているということが明らかにされました。

 質疑応答では多様な質問が出され、登壇者からは、法改正の見通しなどにも言及がありました。

 ※ シンポジウムの内容は熊本大学法学会の研究紀要「熊本法学」第156号に掲載されております。下のリンクからご覧ください。

(池邊摩依)

IMG_4819.JPGのサムネイル画像

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