研究業績

シンポジウム「冤罪被害者と犯罪被害者を結ぶ」

パネリスト:
片山徒有(犯罪被害当事者)
輿掛良一(冤罪被害当事者)
鴨志田祐美(京都弁護士会弁護士)
岡田行雄 熊本大学法学部
概要掲載誌:
熊本法学第153号35~73頁(2021年11月)

 

 このシンポジウムは、前年度の「被害者分断の克服に向けて」というシンポジウムの成果を受けて、冤罪被害者と犯罪被害者も、刑事事件に関連して生じる被害者でありながら、お互いに対立させられているのではないか、という問題意識の下、企画され、2021(令和3)年6月19日に開催されました。

 パネリストは、上記の4氏です。

 当日は、まず、片山氏から、犯罪被害者遺族となられた経緯と検察庁でのその事件処理をめぐる出来事から、その後、犯罪者・非行少年の立ち直りのみならず、裁判員裁判や少年法改正などの立法にも意見する活動をされてきた事情を元に、犯罪被害者からも、被疑者・被告人の適正手続保障が大切であることが説かれました。

 次に、輿掛氏から、ご自身にかけられた殺人の疑いから、逮捕・勾留やひどい取調べで自白を強いられ、第一審で無期懲役判決を受け、どん底に突き落とされたが、第二審で無罪となる中で、様々な支援を受けて、初めて犯罪被害に思いが至ったこと、そして、冤罪は犯罪被害者をもどん底に突き落とすことが説かれました。

 鴨志田氏は、冤罪被害者にも犯罪被害者にも寄り添ってきた経験を元に、冤罪被害者と犯罪被害者は共に突然被害を負わされるという点で共通しており、その分断を克服していくために弁護士がそれぞれに寄り添って活動して、いつか両者をつないでいくことの重要性を説かれました。

 最後に、岡田が、冤罪被害者と犯罪被害者の分断を生み出す構造に大きく関わっているのは捜査機関、即ち、国家であって、冤罪被害者と犯罪被害者が国家に対してそれぞれの権利保障を求めて手を取り合うことの必要性を説きました。

 質疑応答では、犯罪被害者への補償、死刑と犯罪被害者、刑事事件の報道の在り方、適正手続に欠けた故に無罪となった事件における犯罪被害者の思い、など、多様な論点についてのやりとりがありました。

(岡田行雄)

kumahou_153.png

クリックしてPDFを表示