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地域紛争予防・解決部門

人吉農芸学院法教育プロジェクト(その2)(2022年9月30日)

人吉農芸学院との教育及び学術研究に係る連携協定に基づく取組み

 2022年9月30日13時30分から、人吉農芸学院に在院する約40名の在院者に対して、「大切なことはどうやって守られる? 人吉農芸学院法教育プロジェクト~その2」と題した講義を行いました。その内容は、次のようなものです。

 前回は、大事なことは共通していて、この共通の大事なことを国に守らせるのが憲法であって、みなさんが義務を守るより先に、この大事なことが守られなければなりません。しかし、この大事なことが守られないときにどうしたら良いかという問いかけで終わりました。

 今回は、この問いに答える前に、まず、憲法が大事なことを守らせる仕組みがどうなっているかのお話から始めました。

 憲法には、刑事手続における黙秘権などのように大事なことが定められていて、公務員は、この憲法を守らなければならないと定められています(憲法99条)。しかし、憲法で全ての大事なことをどうやっても守らせるかを細かく定めることはできません。そこで、この大事なことを守らせる具体的な仕組みは、法律に委ねられているのです。

 法律を作ることは国会でしかできません。国会に提出された法律案が、衆議院と参議院でそれぞれの多数の議員によって賛成されて、初めて法律ができます。

 この法律は強制力を持っています。例えば、ある人が法律で禁止されたこと、つまり共通の大事なものを傷つけるなどのことを行うと、国から刑罰などの処分を受けます。処分は、それを受ける人にとって痛いものです。人は、一般に嫌なことを避けたいので、共通の大事なものを傷つけることは止めようということになります。こうして、法律によって大事なことは守られる仕組みになっているのです。

 しかし、禁止されたことをある人が行ったら、すぐに処分されるわけではありません。処分をするには手続がなされなければなりません。この手続を通して、禁止されたことがその人によってなされたことが証拠によって裏付けられて、初めて処分がなされるのです。この処分が厳しければ厳しいほど、手続も重たく時間がかかるものとなるのが法律の仕組みです。

 ということは、手続がなされなければ処分はなされません。つまり、被害を受けても、被害者が泣き寝入りして、手続が始まらないままだと処分はなされないのです。被害者が泣き寝入り、あるいは、被害を訴えてもとりあってもらえなかったら、処分はなされません。これは、いじめなどの人権侵害が横行する理由の一つと言えます。

 それでは、例えば加害者が処分されるだけで、加害は本当に止まるのでしょうか?そして、加害者が処分されることで、被害者の痛みは消えるのでしょうか?そもそも、被害の痛みを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?この点については次の機会に、また一緒に考えましょう。

 

 以上の内容の講義に際して、在院者の皆さんから、なぜ刑務所にいなければいけない期間は決まっているのに、少年院にいなければいけない期間は決まっていないのか、などの鋭い質問をいただきましたが、全般に難しかったようで、これは今回の反省点です。

 今後も、この法教育プロジェクトをさらに発展させていきたいと思います。

岡田行雄