人吉農芸学院との教育及び学術研究に係る連携協定に基づく取組み
2022年12月9日13時20分から、人吉農芸学院に在院する約40名の在院者に対して、「法を守るにはどうしたらいい? 人吉農芸学院法教育プロジェクト~その3」と題した講義を行いました。その内容は、次のようなものです。
前回は、憲法に定められている大事なことが守られる仕組みとしての法律に基づく手続や処分を中心にお話でした。
今回は、まず、被害を受けたときに黙っていると、加害者が処分されないだけでなく、被害への手当てや埋め合わせもなされないということから話を始めました。
人は色々なつまずきや失敗を繰り返しながら成長します。なぜ、つまずいても立ち上がれるのかといえば、まわりの人が励ましたり、支えてくれたりするからです。
被害を受けてもそれを乗り越えてきた人たちは、被害の痛みを忘れさせてくれるような支援や励ましをたまたま受けてきた人たちだと言えます。
被害を訴えて、支援や励ましを得られたことは、一種の成功体験とも言えます。人はこうした成功体験を積み重ねていく中で、信頼できる人を見つけて、被害を受けて、つまずいたとしても、次に挑戦ができるようになるのです。
信頼できる人を次々と見つけることができると、信頼できる人のデータが積み重ねられていきます。こうして、人はみな誰かを信頼し、つながりながら生きているのです。
人にはみな長所があります。この長所は短所の裏返しです。騒がしい人は明るい人でもあるのです。一つのことに集中できない人は、色んな事に関心を持つ人でもあるのです。
こうした長所を伸ばすと、困ったときに、信頼できる人が助けてくれやすくなります。犯罪を繰り返した後に、そこから遠ざかった人たちは、他人から認められ、自分に自信を持てるようになった人たちであることも研究によって示されています。他人だけでなく、自分で自分を信頼できるようになることも、とても大切なのです。
長所を伸ばして、他人の力を借りながらもピンチを乗り越えられるようになれば、法律に違反せずに済むようになります。信頼できる人は、法律に違反せずともピンチを乗り越える方法を一緒に見つけてくれるのです。
法律を守って生きている人たちは、こうして、法律や制度、さらには公的機関を信頼しているのです。
もちろん、法律や裁判も人が作った制度ですから、完璧ではありません。法律や制度には限界もありますが、これをどうやって乗り越えて、みんなが気持ちよく生きていける社会にしていくかを一緒に考えていきませんか?
以上の内容の講義に際して、在院者の皆さんからは、自らの長所をどうやって見つければ良いのか、自信と自信過剰はどう違うのかなどの鋭い質問がありました。
今年度の法教育プロジェクトはこれで終了ですが、来年度は、これをさらに発展させていきたいと思います。
岡田行雄