シンポジウム・セミナー

第3回実践社会科学研究会(2023年4月10日開催)

第3回実践社会科学研究会を下記のように開催しました。

日時:2023年4月10日(月)16時25分~18時10分
報告者:中嶋直木(熊本大学大学院人文社会科学研究部(法)准教授)
報告題:実定法制度(行政法総論)からみた「地域」の意味と役割

 2023年4月10日、第3回実践社会科学研究会「実定法制度(行政法総論)からみた「地域」の意味と役割」が、ハイブリッド形式で開催された。
 本研究会では、まず、中嶋准教授から、以下の内容を含む報告があり、その後、参加者から質疑応答があった。

報告

 本報告は、「実定法制度における『地域』を解釈し、理論化する」ことを目指すものである。理論化のために、理念型的モデル(視点)を設定し、同モデルに基づく地域の分類について報告者から説明があった。そして、同分類から法解釈上の実践的帰結を導き出し、最終的に、実践的帰結と実際の立法例との比較・検討がなされた。

 報告者は、地域には、(権限)客体⇔回路⇔参加⇔協働⇔(権限)主体という視点を見出すことができるとする。本報告では、客体としての「地域」が中心的に論じられた。客体としての「地域」については、支援、認定(認証)のそれぞれの側面から、分析が試みられた。また、主体としての「地域」についても、補足的に報告がなされた。

質疑応答

 「地域」において重要な問題である防災について、何か法的論点はあるかとの質問があった。これに対して、報告者からは、安否確認をする際に住民情報の取得が不可欠になるが、各自治体の個人情報保護の制度との関係で問題が生じることが重要な論点として議論されているとの返答があった。この他、「地域」が訴訟を提起する場合にどのような意義があるのか、「地域」は当該区域にいる個人を正当な理由がない限り構成員とすること、また事業の公共的性格もあるため、その限りで、結社の自由の議論をそのまま適用することには疑問である等の意見が出され、盛んな議論があった。

(朝田とも子)