第5回実践社会科学研究会を開催しました。
日時:2024年8月23日(金)16:00 ~ 18:00
場所:熊本大学文法学部棟2階研究会室2
報告者:真重正仁氏(真重法務事務所行政書士)
報告題:入管法、国際相続、技能実習制度廃止等について
熊本で生起している社会問題を取り上げて、法学・政治学・経済学といった社会科学の複数の学問領域の視点からそれらを複合的に検討する「実践社会科学」の確立を目指すこの研究会の第5回目は、はじめて学外から講師をお招きしての研究会となりました。
お招きしたのは、行政書士の真重正仁氏です。真重氏は、外国人の法務手続にたいへんお詳しい方ですが、それでも外国人関係では日々、はじめて接するような法的問題が生じているとのことでしたので、今回はそうした視点からご経験を踏まえたお話しをいただきたいとご依頼いたしました。
いま、熊本はTSMCの進出に象徴されるように、在留外国人の労働者、その家族等を含めて、日本国籍を持たない生活者が増えてきています。こうした方々は政府が与えた在留資格によってわが国への在留が許されているのですが、それは期限付で活動範囲も限定されたものです。それは、通常1~3年程度で更新、活動範囲を示す在留資格の種類は大ざっぱにいって30種、細かくは100種くらいあるのとのことです。この在留資格によって活動範囲も制限され、かつ、更新の際には常に更新の可否を気にしなければならない。そうすると、帰化なり永住資格を得たいと考えるようになる、とのことで、今後、ますます外国にルーツを持つ生活者が増えていくことが予想されるということでした。
ところが、その反面で、こうした方々も、わが国で生活するならわが国の法律を守らなければならない。ただ、わが国の法律を学ぶ機会はなく、そのため、たとえば自動車を運転するとしても車検という制度がある、飲食店を開業するとしても許可制度がある、従業員を雇えば源泉徴収制度・社会保険制度に関係してくる、こうしたことを学ぶ機会もないし、政府・地方公共団体も積極的に情報提供するようなことはいまのところは制度化されていないというような問題があることをお話しいただきました。むしろこうした機関から外国人関係の法的問題が発生すると個別に真重氏のところに問合せがあるような状態とのことです。
熊本・九州をはじめ、わが国ではこれからますます「共生」が唱えられていくものと思われます。共生にもさまざまなフェイズがありますが、こうした〈外国人が日本で生活していくための法律問題〉というようなテーマは、本センターもコミットメントすべき課題であると考えております。
(大日方信春)