
2025年11月15日(土)・同16日(日)に、黒髪北キャンパス文法棟2階A1教室において、法文化学会との共催シンポジウムが開催されました。
法律学において「道徳感情」ないし「感情」は、紛争解決における説得的な理由付けとしては扱われないことが通常です。しかし、人が行為する際の動機付けとして「道徳感情」ないし「感情」が強く作用する以上、行為規範や裁判規範として存在する法律の制定や運用場面において、これらが強い影響力を有する場合があることは、周知のとおりだと考えられます。
そこで、本シンポジウムでは、「道徳感情の法文化」との統一テーマのもと、6つの報告がなされました。裁判の場で裁判担当者の「感情」に訴えかける弁論を行うことの意義や手法、法の適用場面における「感情」の影響など様々な視点から、報告と質疑応答がなされ、非常に充実した内容となりました。また、本センターに所属する3名の教員も登壇し、民法、法哲学、刑事政策の観点から、それぞれ個別報告を行い、活発な議論がなされました。熊本大学法学部生もシンポジウムを聴講し、研究者による専門的な報告と丁寧な議論を経験することができました。
(濵田絵美)
●11月15日(土)
開会の挨拶:大日方信春(熊本大学)
大会テーマ「道徳感情の法文化」趣旨説明:太田寿明(熊本大学)
テーマ報告①:粟辻悠(関西大学)
「古代ローマ世界の法廷弁論における感情-クインティリアヌスによる弁論術の教科書を題材にして」
テーマ報告②:梅澤彩(熊本大学)
「出自を知る権利の保障と個人の尊厳-その限界と可能性」
テーマ報告③:太田寿明(熊本大学)
「18世紀スコットランド法哲学における「党派」の問題」
テーマ報告④:岡田行雄(熊本大学)
「保護司制度改革の行方-このまま世界標準となって良いのか?」
●11月16日(日)
テーマ報告⑤:茂木明奈(白鷗大学)
「人身損害の賠償に対する道徳感情の影響-逸失利益の算定と素因減額を中心に」
テーマ報告⑥:本庄萌(長崎大学)
「動物保護法における感情の位置付け-「動物愛護」を中心に」
閉会の挨拶:出口雄一(慶應義塾大学)