学生・教員リレーエッセイ

2020.11.30  <倉田 賀世>

「年金保険制度への不安を払拭?」

 20歳になると、国民年金保険への加入義務が生じる。送られてきた保険料納付書を見て、月々16540円という保険料を高いと感じたり、保険料を払うのは仕方ないけれど、自分が受給できる年齢になったときに本当にもらえるのだろうかと不安になったりした事があるのではないだろうか。社会保障法の講義でも、度々、そのような声を聞くことがある。
 公的年金制度への不安を払拭し、官庁で働くことについて具体的なイメージを持ってもらうことを目的として、社会保障法演習Ⅰ,Ⅱにおいて、厚生労働省年金局が主催する「学生との年金対話集会」をZOOM開催した。集会では、前半に厚労省年金局の古川企画官より「わたしの年金とみんなの年金」と題して、年金保険制度が、障害や死亡と言ったリスクにも対応しており、高齢期のためだけの制度ではないこと。少子高齢化社会に合わせて財源が枯渇しないようなシステムが導入されている事等をお話頂いた。講義の中でも触れる話題ではあるが、実際に制度を運用する立場の方からのお話は説得力が高いようで、(少し悔しいことに?)うなずく姿が講義に比べてはるかに多く見られた。後半はブレイクアウトセッションを活用して、学生との質疑応答が行われた。学生からは公的年金に上乗せする個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)には加入した方が良いのか等質問があり、実際に加入しているか尋ねられた職員の方が検討中と回答され、ぐっと親近感が増したようだった。
 多くの学生にとって年金保険制度は医療保険制度等と比べると実際に給付を受ける機会がないことから、負担だけを強いられている感を抱きやすい。今回の演習を通じて制度への不公平感や不安を払拭とまではいかないものの、少なからず軽減することができたように思う。同時に、「わたし」の年金という視点だけではなく、「みんな」の年金という「共助」の視点を、改めて認識してもらえる良い機会になった。
 新型コロナ渦の中、社会全体の閉塞感が高まり、他者との接触機会も減ることで,とかく自分を中心とした狭い視点で物事を考えがちになっているような気がする。オンラインをうまく活用し、多様な視点を学ぶ機会をこれまで以上に確保していければと思う。



 ちなみに、当日の説明資料については別添PDFをご参照ください。

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