学生・教員リレーエッセイ

2022.04.04  <教員S(2022年4月4日)>

 春の暖かさを感じる季節となりました。本学法学部にご入学の新入生のみなさま、おめでとうございます。この教員リレーエッセイではテーマに決まりはありませんが、今回は勝手ながら新入生のみなさまに個人的なアドバイスをしたいと思います。動機は単なる老婆心です。自分自身の学生時代を思い返してみても、教員からの忠告なんて耳を素通りしていましたが、年を重ねて「若い時にもっと勉強しておけばよかった」と嘆く大人たちの気持ちが分かるようになってきたので、ここで書き留めて、何かしらの形で皆様に届けばいいと考えた次第です。ただし、偉い先生が含蓄ある名文で書くわけでもないので、一教員が具体的なことから抽象的なことまで思いつくまま書いているので、このアドバイスをどう咀嚼するかは、みなさまにお任せしたいと思います。
(居酒屋に貼ってある「親の意見と冷や酒は後で効く」のようなものだと思ってください。)

・読書は非効率な回り道でなく、見聞の地図を広げていく近道の一つ

 本学法学部では法学はもちろん、政治学や経済学も学べるのはご存知かもしれませんが、教養科目も含め様々な科目の講義を受講することができます。同時に、図書館で多様な専門書を読むことは、「授業を受ける」以上の発見があります。ネット検索を使って最短時間で調べる以上に、時間に余裕のある大学時代に「専門書や一般書を読む勉強」が大きな財産になることを知って欲しいと思います。法学にせよ政治学にせよ、社会を対象とする「社会科学」であることに違いはありません。様々な本を読むことで多様な角度から社会を知ることで、日々出席して話を聞いている講義に深みが出るようになります。みなさんが勉強をする中で、「この本の論点が、財政学の講義で話していた内容に関わってくるのか」とか、「憲法の講義でさらっと言っていたことは、この本で言っていることか」とか、さらには「あの漫画やアニメの元ネタって、この国の歴史なのか」なんて気付く日がきっと(恐らく)来ます。
 ただ「資格試験の勉強でもないのに、それを知って何になるの?(≒卒業後の就職に役に立つの?)」なんて疑問も浮かんでくるかと思います。資格試験の勉強は短期的に言えば、それはそれで大事ですが、そうした一見無駄に見える勉強は、今後の人生で使う地図を広げる作業だと思っています。その地図は、みなさんが長い人生のなかで直面する、悩みや困難、疑問に対して、そのときに選択する道を朧げに示す地図で、それが役に立つ地図かは時の運や環境にもよりますが、それまでの勉強の蓄積にもかかっているのです。時に経済学ではそれを「人的資本」と呼びますが、個人的には経済的な価値に換算できる以上の価値あるものだと思っています。ですので、まずは講義や日々の生活のなかで、興味を持った分野を図書館や大学生協の本棚で見て、本を読んでみることをお勧めします。
 熊本大学には中央図書館がありますが、法学部には法学関連の雑誌を多く配架している法学図書室があります。場所は、五校記念館の向かい、法文棟の南側入り口を入ったところにある法学部事務室です。ぜひとも入り浸って、色々な雑誌を無料で読んで、勉強に役立てていただければと思います。

法学図書室<https://www.law.kumamoto-u.ac.jp/study-support/