

講演会「『動物福祉』と『動物愛護』を考える:動物保護法の日欧比較」が開催されました
長崎大学の本庄萌准教授によるご講演がありました。
2024年7月12日、文法学部A2教室において、動物法の国際比較を中心とした比較法研究者として著名な長崎大学環境科学部の本庄萌准教授(主著に『動物福祉と法:欧米における動物実験規制』成文堂、2024年)により、「『動物福祉』と『動物愛護』を考える:動物保護法の日欧比較」という論題のもと、ご講演いただきました。
動物保護運動は、多くの課題を抱えながらも世界各地で進んでおり、それは熊本県においても同様の状況となります(本庄萌『世界のアニマルシェルターは、 犬や猫を生かす場所だった。』ダイヤモンド社、2017年、270-4頁)。しかし他方で、〈動物を保護する〉という考えには、「動物の権利」「動物福祉」「動物愛護」といった----しばしば独特な文化的・社会的背景を持つ----多様なものがあり、動物保護および動物法を研究するためには、それらひとつひとつを丁寧に理解する必要があります。本庄准教授には、そうした視点から、まず(主に英米圏における)「動物の権利」と「動物福祉」という考え方の限界を巡る争いがあること、近時の研究ではそうした二項対立を乗り越えるための議論が必要とされ、その克服を探る動物法理論が展開されつつあることを説明して頂きました。そのうえで、「動物福祉」概念を中心に構想された法体系といえるEUの動物保護法を分析していただき、そこから日本の動物法制----「動物愛護」という発想が長く支配的であった一方、近時は「動物福祉」法への転換を迎えつつある日本の動物愛護法の現在地と可能性----について、比較法の視座から論じていただきました。
以上のように、本庄准教授には動物法制とその研究の最前線を見通していただくとともに、熊本市動物愛護センターをはじめとした熊本における動物保護活動の進展をご紹介いただくことで、理論的パースペクティブと(熊本における)実践的問題関心の双方が喚起される、たいへん充実した講演をしていただきました。講演への参加者とも活発なディスカッションが交わされました。
※本講演は、法学部研究教育振興会の支援を受けてなされたものです。
